1階微分方程式 総まとめ演習プリント

1階微分方程式 完全攻略

初めに

本ページは、『1階微分方程式 完全攻略』 第一回~第十回を一通り学んだ後に、理解度の定着を確認するための演習プリントである。全8問あり、標準時間は50分である。ぜひ時間を計ってやってみてほしい。

ポイントは、与えられた微分方程式が『どの型』なのかを見極めることである。見極めることができたなら、あとはその型に対する解法を適用していくのだ。

8問中6問以上できた人は合格である。良かったら次の『2階微分方程式の解法』へ進むといいだろう。

では、健闘を祈る。


第1問

$$y’=\frac{2}{x}y   の一般解を求めよ。$$

$$y’-\frac{2}{x}y=0 とみると、これは『一の型:y’+a(x)y=0』である。$$よって、公式より、$$y=Cexp(-\int a(x) dx)=Cexp(\int \frac{2}{x}dx)$$$$=Cexp(2log|x|)=Cexp(logx^{2})=Cx^{2}$$$$したがって、y=Cx^{2} (C は定数)$$

第2問

$$初期値問題   \begin{cases}y’-(logx)y=0 \\y(1)=2 \end{cases}   の解を求めよ。$$

与式は、『一の型の初期値問題』:\( \begin{cases}y’+a(x)y=0\\y(x_0)=y_0 \end{cases}である。\) $$よって、公式より、y=y_0exp(-\int_{x_0}^{x} a(t) dt)=2exp( \int_{1}^{x} logt dt)$$$$=2exp( \left[ tlogt-t \right]_{1}^{x})=2exp(xlogx-x+1)=2x^{x}e^{-x+1}$$$$したがって、y=2x^{x}e^{-x+1}$$

第3問

$$y’+\frac{2}{tanx}y=\frac{1}{sin^{2}x}の一般解を求めよ。$$

与式は、『二の型』である。積分因子は、$$\mu(x)=exp(\int a(x) dx)=exp(\int \frac{2}{tanx} dx)=exp(2\int \frac{cosx}{sinx}dx)$$$$=exp(2log|sinx|)=exp(log|sinx|^{2})=sin^{2}x となる。$$
よって、\(\mu(x)=sin^{2}x\) を与式の両辺にかけると、$$(与式)\Leftrightarrow \frac{d}{dx}(y \cdot sin^{2}x)=1$$と変形される。両辺 \(x\) で積分して、$$y\cdot sin^{2}x=x+C、$$$$したがって、y=\frac{x}{sin^{2}x}+\frac{C}{sin^{2}x} (C は積分定数).$$

第4問

$$初期値問題   \begin{cases}y’+2xy=e^{-x^{2}} \\y(0)=1 \end{cases}   の解を求めよ。$$

与式は、『二の型の初期値問題』である。積分因子は、$$\mu(x)=exp(\int 2x dx)=exp(x^{2})=e^{x^{2}} となる。$$よって、\(\mu(x)=e^{x^{2}}\) を与式の両辺にかけると、$$(与式)\Leftrightarrow \frac{d}{dx}(e^{x^{2}} \cdot y)=1$$と変形される。両辺を 0 から \(x\) まで積分して、$$e^{x^{2}} \cdot y – e^{0} \cdot 1=x、$$$$したがって、y=e^{-x^{2}}(x+1)$$

第5問

$$yy’+(1+y^{2})x^{-1}=0   の一般解を求めよ。$$

$$(与式)\Leftrightarrow y’=-\frac{(1+y^{2})x^{-1}}{y}=\frac{-x^{-1}}{\frac{y}{1+y^{2}}} とみると、$$$$これは『変数分離型:y’=\frac{g(x)}{f(y)}』である。$$
\(f(y)=\frac{y}{1+y^{2}}\) の原始関数は、\(F(y)=\frac{1}{2}log(1+y^{2})\) であるから、$$(与式)\Leftrightarrow \frac{d}{dx}(log(1+y^{2}))=-\frac{2}{x}$$と変形される。両辺を \(x\) で積分して、$$log(1+y^{2})=-2log|x|+C_1=logx^{-2}+C_1、$$$$したがって、1+y^{2}=Cx^{-2} となる。(陰関数表示)$$

第6問

$$初期値問題  \begin{cases}y’=3x^{2}\sqrt{1-y^{2}} \\y(0)=1 \end{cases} の解を求めよ。$$

$$(与式)\Leftrightarrow y’=\frac{3x^{2}}{(\frac{1}{\sqrt{1-y^{2}}})} とみると、これは『変数分離型の初期値問題』である。$$$$よって、\int_{1}^{y}\frac{1}{\sqrt{1-u^{2}}}du=\int_{0}^{x}3t^{2} dt$$$$\Leftrightarrow \int_{\frac{\pi}{2}}^{sin^{-1}y}\frac{1}{\sqrt{1-sin^{2}\theta}}\cdot cos\theta d\theta=x^{3}$$$$\Leftrightarrow \left[ \theta \right]_{\frac{\pi}{2}}^{sin^{-1}y}=x^{3}$$$$\Leftrightarrow sin^{-1}y-\frac{\pi}{2}=x^{3}$$$$y=sin(x^{3}+\frac{\pi}{2}) となる.$$

第7問

\(初期値問題   \begin{cases}ysinx+siny+cosx+(xcosy+siny-cosx)y’=0\\y(0)=\pi \end{cases}\)

の解を求めよ。

与えられた微分方程式は、
\begin{cases}
M(x , y)=ysinx+siny+cosx\\
N(x , y)=xcosy+siny-cosx   とおくと、
\end{cases}   
\begin{cases}
\frac{\partial M}{\partial y}=sinx+cosy\\
\frac{\partial N}{\partial x}=cosy+sinx   
\end{cases}
つまり、$$\frac{\partial M}{\partial y}=\frac{\partial N}{\partial x}$$を満たすので『完全形』である。
したがって、定理1より、
\begin{cases}
\frac{\partial \phi}{\partial x}=M(x , y)\\
\frac{\partial \phi}{\partial y}=N(x , y)   つまり、
\end{cases}   
\begin{cases}
\frac{\partial \phi}{\partial x}=ysinx+siny+cosx\\
\frac{\partial \phi}{\partial y}=xcosy+siny-cosx   を満たす関数 \phi(x , y) が存在する。
\end{cases} 
第1式の両辺を \(x\) で積分し、かつ、第2式の両辺を \(y\) で積分すると、
\begin{cases}
\phi(x , y)=-ycosx+xsiny+sinx+p(y)・・・①\\
\phi(x , y)=xsiny-cosy-ycosx+q(x)・・・②   を得る。
\end{cases}   
①、②の両辺を見比べて
\begin{cases}
p(y)=-cosy\\
q(x)=sinx   が分かる。
\end{cases} 
したがって、$$\phi(x , y)=xsiny-ycosx+sinx-cosy$$となる。
これより、与式は、$$\frac{d}{dx}\phi(x , y)=0、$$つまり、$$\frac{d}{dx}(xsiny-ycosx+sinx-cosy)=0$$と変形でき、両辺を \(x\) で積分することにより、$$xsiny-ycosx+sinx-cosy=C (C は定数)$$として解を得る。(陰関数表示)

これで、与式の一般解は得られた。
これに、初期条件である、\(x=0、y=\pi\) を代入して、\(C=1-\pi\) したがって、求める解は、$$x^{3}y+4x^{2}y^{2}+4y^{3}=1-\pi$$となる。(陰関数表示)

第8問

$$初期値問題   \begin{cases}2x(e^{y}+y)+(e^{y}+1)y’=0\\y(0)=1 \end{cases}   の解を求めよ。$$

$$M(x , y)=2x(e^{y}+y) 、N(x , y)=e^{y}+1$$とおくと、$$\frac{\partial M}{\partial y}=2x(e^{y}+1) 、\frac{\partial N}{\partial x}=0$$なので、与式は完全形でない。ここで、$$\frac{\frac{\partial N}{\partial x}-\frac{\partial M}{\partial y}}{N}=-\frac{0-2x(e^{y}+1)}{e^{y}+1}=-2x$$と \(x\) のみの関数となる。よって、積分因子として、\(\mu(x)=exp(\int 2xdx)=e^{x^{2}}\) を与式の両辺にかけると、$$2x(e^{y}+y)e^{x^{2}}+(e^{y}+1)e^{x^{2}}y’=0・・・(\star)$$は完全形となる。

したがって、定理1より、
\begin{cases}
\frac{\partial \phi}{\partial x}=2x(e^{y}+y)e^{x^{2}}\\
\frac{\partial \phi}{\partial y}=(e^{y}+1)e^{x^{2}} 
\end{cases}
を満たす関数 \(\phi(x , y)\) が存在する。これより、
\begin{cases}
\phi(x , y)=(e^{y}+y)e^{x^{2}}+p(y)・・・①\\
\phi(x , y)=(e^{y}+y)e^{x^{2}}+q(x)・・・②   を得る。
\end{cases}   
①、②の両辺を見比べて、\(p(y)=q(x)=0\) として、$$\phi(x , y)=(e^{y}+y)e^{x^{2}}$$ を得る。
したがって、\((\star)\) は$$\frac{d}{dx}\left((e^{y}+y)e^{x^{2}}\right)=0$$ と変形され、これより、一般解:$$(e^{y}+y)e^{x^{2}}=C (C は定数) を得る。$$
これに、初期条件である、\(x=0、y=1\) を代入して、\(C=e+1\) したがって、求める解は、$$(e^{y}+y)e^{x^{2}}=e+1$$となる。

最後に

さていかがだっただろうか?後半になるにつれ、計算量が多くなり大変だったのではないだろうか?もし、時間内に終わらなくともじっくり時間をかけてできたのなら全然OKだ!スピードというのは練習次第で改善されるものだからだ。

上の解答は、とても丁寧に作ったのでかなり長いものもあるが、慣れてきたら書く量を減らしていってよいだろう。必要最小限の式だけで解けるようになるのが理想的だ。

もし、六問以上できなかったら、もう一度対応する回を復習して、また再挑戦すればよいだろう。

今後、『2階微分方程式』についても、その解法を体系的に説明する記事を作成したいと思う。

1階微分方程式の解法よりも数段レベルが上がるが、ここまで到達し、合格したならば何も心配はないだろう。良かったら自信をもって挑戦してみてほしい。

では、またディープな数学の世界で会おう!


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