1階微分方程式 完全攻略 ~第六回~

1階微分方程式 完全攻略

初めに

これまで、1階の線形微分方程式について学んできた。(定義についてはこちら

今回は、線形でないもの、すなわち『変数分離型』と呼ばれる微分方程式について学んでいこう。


変数分離型の微分方程式

\(f(y)\) を \(y\) についての関数、\(g(x)\) を \(x\) の関数とする。このとき、$$y’=\frac{g(x)}{f(y)}$$の形、および、この形の変形できる微分方程式を『変数分離型』という。

具体例

上のように言われてもピンとこないだろう。具体例として例えば、

\begin{split}
&(1)y’=1+y^{2}\\
&(2)yy’+(1+y^{2})sinx=0\\
&(3)y’=-\frac{x}{y}
\end{split}

などがある。

第1回でも述べたが、微分方程式を解くうえで最も大切なことの一つは、微分方程式が与えられたとき、それが『どの型』に属するのかを見極めることである。そして、見極めることができたなら、今回の例で言えば \(f(y)\) と \(g(x)\) に対応する関数は何かということを見極めることである。

上記の例の場合、まずどれも1階の線形微分方程式になっていない(\(y\) が単体で現れていないから)ことに気づくことが第一ステップである。つまり、『一の型』、『二の型』ではないということである。

そして、次に『変数分離型』かどうか考えたときに、

(1)について、\(f(y)=\frac{1}{1+y^{2}}\)、\(g(x)=1\)

(2)について、両辺 \(y\) で割って、$$y’+\frac{1+y^{2}}{y}sinx=0$$$$\Leftrightarrow y’=-\frac{sinx}{\frac{y}{1+y^{2}}}$$と変形すると、\(f(y)=\frac{y}{1+y^{2}}、g(x)=-sinx\)となる。

(3)について\(f(y)=y、g(x)=1\) となるので、すべて変数分離型であることがわかる。

注意

『一の型』の微分方程式:\(y’+a(x)y=0\) は変数分離型の特別な場合である。つまり、
\(y’=-a(x)y\) と見ると、\(f(y)=\frac{1}{y}、g(x)=-a(x)\) として$$y’=\frac{g(x)}{f(y)}$$と書けるので、これは変数分離型ともみなせるのである。
この、観点から言えば、変数分離型は一の型の一般形と言える訳である。

解き方

では、これから解き方を見ていこう。

$$y’=\frac{g(x)}{f(y)}$$ の両辺に f(y) をかけると、
$$f(y)y’=g(x)・・・①$$
ここで、左辺を見てピンと来た人は、相当微分計算に通じている人である。

つまり、\(F(y)\) を\(f(y)\) の\(y\) に関する任意の不定積分とすると、合成関数の微分公式より、$$\frac{d}{dx}F(y(x))=F'(y) \cdot y’=f(y) \cdot y’$$が成り立つので、①は$$\frac{d}{dx}F(y)=g(x)$$と書ける。両辺を \(x\) で積分すると、$$F(y)=\int g(x)dx+C (Cは定数)$$

これで一応できることは全てやった。続きの計算は \(F(y)\) (← \(y\) の何らかの関数) の形のよってケース by ケースであるが、\(F(y)\) が複雑すぎる場合、\(y\) について解くことは難しい。(例えば、\(F(y)\) が \(y\) についての5次方程式だった場合など)

したがって、実際問題として扱われるのは、\(F(y)\) が比較的簡単になる場合である。

一般論はここまでにして、後は実際に具体的な問題を解くことによって慣れていこう。


まとめ

今回は、新たな型『変数分離型』を得た。

今回、解法の突破口となったのは、『合成関数の微分公式』$$\frac{d}{dx}F(y(x))=f(y) \cdot y’    (\: F(y) \:は \:f(y)\: の原始関数\:)$$であった。

まとめると、

変数分離型

$$y’=\frac{g(x)}{f(y)}$$ の形をした微分方程式を『変数分離型』と呼び、\(F(y)\) は\(f(y)\) の原始関数、つまり、

$$\frac{d}{dx}F(y)=f(y)$$ を満たす関数とすると、$$F(y)=\int g(x)dx+C (Cは定数)$$となる。(不完全な解であることに注意!)

練習問題

第6回の最後に『変数分離型』である次の問題たちを倒してみよう!

(1)$$y’=\frac{x^{2}}{y^{2}}$$ の一般解を求めよ。

まず、与えられた微分方程式は明らかに変数分離型である。
両辺に \(y^{2}\) をかけて、$$y^{2}y’=x^{2}、$$すなわち、$$\frac{d}{dx}(\frac{y^{3}}{3})=x^{2}、$$両辺を \(x\) で積分して、$$y^{3}=x^{3}+C \;(C は定数)$$よって、$$y=(x^{3}+C)^{\frac{1}{3}}\;(C は定数)$$

(2)$$e^{y}y’-x-x^{3}=0$$ の一般解を求めよ。

まず、与えられた微分方程式は、\(y’\) について解くと$$y’=\frac{x+x^{3}}{e^{y}}$$と変形できるので、\(f(y)=e^{y}、g(x)=x+x^{3}\) と見ると、変数分離型である。両辺に \(e^{y}\) をかけて、$$e^{y}y’=x+x^{3}、$$すなわち、$$\frac{d}{dx}e^{y}=x+x^{3}、$$両辺を \(x\) で積分して、$$e^{y}=\frac{x^{2}}{2}+\frac{x^{4}}{4}+C \;(C は定数)$$よって、$$y=log(\frac{x^{2}}{2}+\frac{x^{4}}{4}+C)\;(C は定数)$$

(3)$$y’=-\frac{x}{y}$$ の一般解を求めよ。

まず、与えられた微分方程式は明らかに変数分離型である。
両辺に \(y\) をかけて、$$yy’=-x、$$すなわち、$$\frac{d}{dx}(\frac{y^{2}}{2})=-x、$$両辺を \(x\) で積分して、$$\frac{y^{2}}{2}=-\frac{x^{2}}{2}+C’ \;(C’ は定数)$$よって、$$y^{2}=x^{2}+C \;(C は定数)$$これを、\(y=(x の一価関数)\) 形に書けないのでこのままの形でよい。
この表示を、『解の陰関数表示』という。

さて、いかがだっただろうか? 実際に問題を解くと、腑に落ちる感覚にならないだろうか?

解き始めで、大切なのは与えられた微分方程式が『変数分離型』になっていることを見極めることだということに気づいたことと思う。『型』さえ分かればなんとかなる!と自信を持って言えるくらいになるまで練習を積んでほしい。

まだまだ、先は長いが毎日コツコツ学んでいこう!

では、またディープな数学の世界で会おう!


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