はじめに
第四回で『二の型』:\(y’+ a(x)y=b(x)\) の解法を学んだ。
第三回で『一の型』初期値問題を解いたのと同様に、今回は『二の型』の初期値問題を扱う。
→第三回はこちら。
つまり問題は、
\begin{cases}
y’+a(x)y=b(x)\\
y_0=y(x_0) (←初期条件)
\end{cases}
を解くことである。
『二の型』の初期値問題の解
第三回で予告した通り、より良い計算を用いて、今回の初期値問題も、最終目標に達したときに得た式、$$\frac{d}{dx}(\mu(x)y)=\mu(x)b(x)$$の両辺を \(x_0\) から \(x\) まで積分することによって求めてみよう。すると、$$\mu(x)y-\mu(x_0)y_0=\int_{x_0}^{x} \mu(t)b(t) dt、$$$$y=\frac{1}{\mu(x)}\left( \mu(x_0)y_0+\int_{x_0}^{x} \mu(t)b(t) dt\right)、$$
これで完成!
第三回の時よりかなり簡単に求めることができただろう?
これが実際に初期条件を満たすことのチェックはお任せしよう。
まとめ
今回は、『二の型』の初期値問題の解法を学んだ。
まとめると、
練習問題~二の型の初期値問題編~
第五回の最後に今回学んだ方法を用いて次の練習問題たちを倒してみよう!
以下の問題は、第四回の練習問題の初期値問題である。
(1)
\begin{cases}
y’+y=1\\
y(0)=1
\end{cases}
よって、両辺に \(e^{x}\) をかけて、$$e^{x}y’+e^{x}y=e^{x}$$$$\Leftrightarrow \frac{d}{dx}(e^{x}y)=e^{x}$$両辺を0から\(x\) まで積分して、
\begin{split}
e^{x}y-e^{0}\cdot 1&=\int_{0}^{x}e^{t}dt\\
e^{x}y&=1+(e^{x}-1)\\
y&=1
\end{split}
(2)
\begin{cases}
y’-2xy=x\\
y(1)=2
\end{cases}
よって、両辺に \(e^{-x^{2}}\) をかけて、$$e^{-x^{2}}y’-2xe^{-x^{2}}y=xe^{-x^{2}}$$$$\Leftrightarrow \frac{d}{dx}(e^{-x^{2}}y)=xe^{-x^{2}}$$両辺を1から\(x\) まで積分して、
\begin{split}
e^{-x^{2}}&y-2e^{-1}=\int_{1}^{x}te^{-t^{2}}dt\\
e^{-x^{2}}&y-2e^{-1}=\left[-\frac{1}{2}e^{-t^{2}}\right]_{1}^{x}\\
&y=e^{x^{2}}(-\frac{1}{2}e^{-x^{2}}+\frac{5}{2e})\\
&y=-\frac{1}{2}+\frac{5}{2e}e^{x^{2}}
\end{split}
(3)
\begin{cases}
y’+y=\frac{1}{1+x^{2}}\\
y(0)=2
\end{cases}
よって、両辺に \(e^{x}\) をかけて、$$e^{x}y’+e^{x}y=\frac{e^{x}}{1+x^{2}}$$$$\Leftrightarrow \frac{d}{dx}(e^{x}y)=\frac{e^{x}}{1+x^{2}}$$両辺を0から \(x\) まで積分して、
\begin{split}
e^{x}&y-2e^{0}=\int_{0}^{x}\frac{e^{t}}{1+t^{2}}dt\\
&y=e^{-x}(2+\int_{0}^{x}\frac{e^{t}}{1+t^{2}}dt)\\
\end{split}
※これで第一回から続いてきた『1階線形微分方程式』の話は終わりである。
次回の第6回から、『1階非線形微分方程式』の話が始まる。
ここまで、ついてこれた貴方ならこの後も問題なく進んでいけるだろう。
では、またディープな数学の世界で会おう!
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