1階微分方程式 完全攻略 ~第三回~

1階微分方程式 完全攻略

はじめに

前回の復習

第二回で、『一の型』\(y’+ a(x)y=0\) の一般解を得た。今一度書くと、

\(y=Cexp(-\int a(x) dx)\) \((C は定数)\) だ。

※第2回の復習はこちらから


解の個数について

ここで、「この解の個数は?」と問われると、答えは無限個となる。
なぜなら、定数 \(C\) は任意でよいからである。

しかし応用においては、『ある一つの値 \(x_0\) において値 \(y_0\) をとる』解、すなわち特殊解 \(y\) を求めることが常である。

つまり、\(y’+ a(x)y=0\) , \(y_0=y(x_0)\) という初期条件が付いた微分方程式を解くことになるのだ。

このような問題を初期値問題という。

初期値問題の解

さて、無限個の解:\(y=Cexp(-\int a(x) dx)\) \((C は定数)\) のうち、初期条件:\(y_0=y(x_0)\) を満たす解を求めるためにはどうすればよいのだろうか?

目標は、\(y_0=y(x_0)\) を満たすように、任意定数である \(C\) を確定させることである。

任意定数 \(C\) を求める。

今、\( \int a(x) dx \) は \(a(x)\) の原始関数、つまり \(x\) のある関数であるから、記述の簡単化のため、これを\(A(x)\) と置いてよいだろう。

すると、一般解は \(y=Ce^{-A(x)}\) と書ける。\(x=x_0\) を代入すると、初期条件により

\(y_0=Ce^{-A(x_0)}\) と書ける。これより、定数 \(C\) は、\( C=y_0e^{A(x_0)} \)と確定する。

初期値問題の解

したがって、求める特殊解は、\(y=Ce^{-A(x)}\) に \( C=y_0e^{A(x_0)} \) を代入して、

$$y=(y_0e^{A(x_0)})e^{-A(x)} ,$$$$y=y_0e^{-(A(x)-A(x_0))} ,$$よって、$$y=y_0exp(-\int_{x_0}^{x}a(t)dt) (※e^{f(x)}=exp(f(x))の書き方に直した)$$となる。

注意!

\(A(x)\) は \(a(x)\) の原始関数であるから、定義より、$$\int_{x_0}^{x}a(t)dt =\left[A(x)\right]^{x}_{x_0}=A(x)-A(x_0)$$が成り立つことに注意する。

すなわち、$$y=y_0exp(-\int_{x_0}^{x}a(t)dt)$$が求める特殊解となる。

より良い計算 (第5回でも使う)

さて、上で特殊解を求めたが、実は次のような方法がある。

それは、\(y’+ a(x)y=0\) の一般解を求める過程で、最終目標に達した瞬間、つまり、$$\frac{d}{dx}log|y|=-a(x)$$を得た次の計算で、両辺を \(x_0\) から \(x\) まで積分するのである。

すると、$$\int_{x_0}^{x} \frac{d}{dx}log|y| dt=-\int_{x_0}^{x}a(t)dt、$$$$log|y|-log|y_0|=-\int_{x_0}^{x}a(t)dt、$$$$log|\frac{y}{y_0}|=-\int_{x_0}^{x}a(t)dt、$$両辺を\(e\) の肩に乗せて、$$|\frac{y}{y_0}|=exp(-\int_{x_0}^{x}a(t)dt)、$$

この次の計算は、第1回の 『5. \(y’+ a(x)y=0\) の具体例の解法』(詳しくはこちら)で述べたのと同じ理由により、ただで絶対値記号を外して良く、結果、$$y=y_0exp(-\int_{x_0}^{x}a(t)dt)$$を得る。

これは、上で得たのと同じ結果である。

この方法は、今回の問題では計算量も変わらず、メリットが感じられないと思うかもしれないが、後に別の問題の初期値問題を求めるときに威力を発揮するのだ。なので、今は後者の方法をマスターして欲しい。

検算

上で求めた解が実際に初期条件を満たすことを確認してみよう。

\(x=x_0\) を解に代入すると、

\(y(x_0)=y_0exp(-\int_{x_0}^{x_0}a(t)dt)=y_0exp(0)=y_0\)

となって、確かに初期条件を満たすことが分かる。

また、\(y=y_0exp(-\int_{x_0}^{x}a(t)dt)\) を \(x\) で微分すると、

\(y’=y_0exp(-\int_{x_0}^{x}a(t)dt) \cdot (-\int_{x_0}^{x}a(t)dt)’=-a(x)y\)

すなわち、\(y’+ a(x)y=0\) を満たす。これで、上で求めた特殊解は、確かに与式の解であることが確認された。


まとめ

今回は、『一の型』の初期値問題の解法を学んだ。

前回も述べたが、微分方程式を解くうえで大切なことは、与えられた微分方程式がどの型に属するのか?ということを見極めることである。
以下にまとめておく。

一の型の初期値問題

\begin{cases}
y’+a(x)y=0\\
y_0=y(x_0) (←初期条件)
\end{cases}
の形をした微分方程式を『一の型の初期値問題』と呼び、その解は、$$y=y_0exp(-\int_{x_0}^{x}a(t)dt)$$

第3回の最後に、上で学んだことを用いて次の練習問題たちを倒してみよう。

練習問題~一の型の初期値問題編~

(1)\(y’-(cosx)y=0\) , \(y(\pi)=1\)

\(y=1 \cdot exp(-\int_{\pi}^{x}(-cost) dt)=exp(\left[sint\right]_{\pi}^{x})=exp(sinx)=e^{sinx}\)

(2)\(y’-(3x^{2}+1)y=0\) , \(y(0)=2\)

\(y=2 \cdot exp(-\int_{0}^{x}(-3t^{2}-1)dt )=2exp(\left[t^{3}+t\right]_{0}^{x})=2exp(x^{3}+x)=2e^{x^{3}+x}\)

(3)\(y’-\frac{1}{x}y=0\) , \(y(1)=2\)

\(y=2 \cdot exp(-\int_{1}^{x}(-\frac{1}{t})dt )=2exp(\left[logt\right]_{1}^{x})=2exp(logx)=2x\)

さて、いかがだっただろうか?

『型』に対する解法を適用することによって、「解くスピード=倒すスピード」がとても速くなったと感じただろう。これが成長ということである。

まだまだ、道は長いがこの調子で頑張って『型』を極めていこう!

では、またディープな数学の世界で会おう!

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