1階微分方程式 完全攻略 ~第七回~

1階微分方程式 完全攻略

初めに

前回、『変数分離型』の解法を学んだ。今回は『変数分離型の初期値問題』を考えよう。

つまり問題は、

\begin{cases}
y’=\frac{g(x)}{f(y)}\\
y_0=y(x_0)
\end{cases}を解くというものである。


初期値問題の解

第5回でやったのと同様の方法により求めてみよう。第5回の復習はこちら

その方法とは、一般解を求める途中で得た$$\frac{d}{dx}F(y(x))=g(x)$$の両辺を、\(x_0\) から \(x\) まで積分するというものである。すると、$$F(y)-F(y_0)=\int_{x_0}^{x}g(t)dt・・・①$$よって、$$F(y)=F(y_0)+\int_{x_0}^{x}g(t)dt$$

続きの計算は、\(F(y)\) の形よってケース by ケースである。

変数分離型の場合に使える計算法

上記の方法でもよいが、変数分離型の場合、少し便利な別の計算法もあるので紹介しよう。
上の①について新たな見方をしてみよう。

①の左辺:\(F(y)-F(y_0)\) は、\(F(y)\) が \(f(y)\) の原始関数であることに注意すると、$$F(y)-F(y_0)=\left[F(u)\right]_{y_0}^{y}=\int_{y_0}^{y}f(u)du$$と書ける。つまり、①は$$\int_{y_0}^{y}f(u)du=\int_{x_0}^{x}g(t)dt・・・②$$と書けるということである。

何が言いたいかというと、変数分離型の初期値問題を解く場合、\(f(y)\) と \(g(x)\) を見極めることができたら、いきなり②の積分計算から始めればよいということだ。そうすることで多少計算量は少なくなるし、何より②は両辺が積分の形で覚えやすいということがある。

いずれにしても詳しい計算法は具体例を解きながら見ていこう!

例題~変数分離型~

問題

\begin{cases}
y’=1+y^{2}\\
y(0)=1    を解け。
\end{cases}

解答

$$まず、y’=\frac{1}{(\frac{1}{1+y^{2}})}より、$$\begin{cases}
f(y)=\frac{1}{1+y^{2}}\\
g(x)=1    とおくと、
\end{cases}$$y’=\frac{g(x)}{f(y)} と書けるので、これは『変数分離型』である。$$

よって、上の②の形から始めて、$$\int_{y_0}^{y}f(u)du=\int_{x_0}^{x}g(t)dt$$$$\Leftrightarrow \int_{1}^{y}\frac{1}{1+u^{2}}du=\int_{0}^{x}1dt$$$$\Leftrightarrow\left[Arctanu\right]_{1}^{y}=\left[t\right]_{0}^{x}$$$$\Leftrightarrow Arctany-Arktan1=x$$$$\Leftrightarrow Arctany=x+\frac{\pi}{4}$$$$\Leftrightarrow y=tan(x+\frac{\pi}{4})$$よって、求める解は、$$y=tan(x+\frac{\pi}{4})$$となる。

これは、確かに \(x=0\) のとき、\(y=tan\frac{\pi}{4}=1\) となって初期条件を満たす。


まとめ

さて、いかがだっただろうか?
変数分離型の初期値問題もやり方を知っていればそこまで難しくはないと感じたのではないだろうか。

とにかく計算練習が大切だということは言わずもながらだろう。

今回の内容をまとめると、

変数分離型』の初期値問題

\begin{cases}
y=\frac{g(x)}{f(y)}\\
y_0=y(x_0)
\end{cases}    の形をした微分方程式を変数分離型の初期値問題といい、その解は、$$\int_{y_0}^{y}f(u)du=\int_{x_0}^{x}g(t)dt から始めて計算していく。$$
          (続きの計算は問題によってケース by ケース)

練習問題~変数分離型の初期値問題編~

第七回の最後に変数分離型の初期値問題をいくつか倒してみよう。

(1)$$y’=\frac{x^{2}}{y^{2}}、 y(0)=1$$

(\(f(y)=y^{2}、g(x)=x^{2}\)である。)
$$\int_{y_0}^{y}f(u)du=\int_{x_0}^{x}g(t)dt$$$$\Leftrightarrow \int_{1}^{y}u^{2}du=\int_{0}^{x}t^{2}dt$$$$\Leftrightarrow\left[\frac{1}{3}u^{3}\right]_{1}^{y}=\left[\frac{1}{3}t^{3}\right]_{0}^{x}$$$$\Leftrightarrow y^{3}-1=x^{3}$$$$\Leftrightarrow y^{3}=x^{3}+1$$よって、$$y=(x^{3}+1)^{\frac{1}{3}}$$ 
\))アコーディオンボックス内容

(2)$$e^{y}y’-x-x^{3}=0、 y(0)=1$$

(\(f(y)=e^{y}、g(x)=x+x^{3}\)である。)
$$\int_{y_0}^{y}f(u)du=\int_{x_0}^{x}g(t)dt$$$$\Leftrightarrow \int_{1}^{y}e^{u}du=\int_{0}^{x}(t+t^{3})dt$$$$\Leftrightarrow\left[e^{u}\right]_{1}^{y}=\left[\frac{t^{2}}{2}+\frac{t^{4}}{4}\right]_{0}^{x}$$$$\Leftrightarrow e^{y}-e=\frac{x^{2}}{2}+\frac{x^{4}}{4}$$$$\Leftrightarrow e^{y}=\frac{x^{2}}{2}+\frac{x^{4}}{4}+e$$よって、$$y=log(\frac{x^{2}}{2}+\frac{x^{4}}{4}+e)$$ 

(3)$$y’=-\frac{x}{y}、 y(1)=2$$

(\(f(y)=y、g(x)=-x\)である。)
$$\int_{y_0}^{y}f(u)du=\int_{x_0}^{x}g(t)dt$$$$\Leftrightarrow \int_{2}^{y}udu=\int_{1}^{x}(-t)dt$$$$\Leftrightarrow\left[\frac{u^{2}}{2}\right]_{2}^{y}=\left[-\frac{t^{2}}{2}\right]_{1}^{x}$$$$\Leftrightarrow \frac{y^{2}}{2}-2=-\frac{x^{2}}{2}+\frac{1}{2}$$よって、$$x^{2}+y^{2}=5・・・(★)$$ 
これを、\(y=(x の一価関数)\)として解くことはできない。このような場合、(★)のままの形で解として良い。これを、『解曲線』という。

さて、いかがだっただろうか?実際に問題を解くことによって、
理解がぐっと深まったはずである。

まだまだ、道は長いが一歩一歩着実に歩んでいこう!

ではまたディープな数学の世界で会おう!


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