第1回 解答
問題.1 解答
クロネッカーのデルタの定義:\(\delta_{i , j}=\begin{cases}1 (i=j)\\0 (i \ne j)\end{cases}\) より、\(\delta_{4-i , j}=1\) となる \((i , j)\) の組を求めると、
\begin{split}4-i&=j\\ \Leftrightarrow i+j&=4 (1 \leq i , j \leq 4)\end{split}
よって、\((i , j)=(1 , 3)、(2 , 2)、(3 , 1)\) となる。これらの成分以外の \((i , j)\) に対しては全て、\(\delta_{4-i , j}=0\) である。
したがって、
\begin{split}
a_{13}&=(-1)^{1+3}\cdot1\cdot3\cdot\delta_{3 , 3}=3\\
a_{22}&=(-1)^{2+2}\cdot2\cdot2\cdot\delta_{2 , 2}=4\\
a_{31}&=(-1)^{3+1}\cdot3\cdot1\cdot\delta_{1 , 1}=3
\end{split}となるので、
$$A=\begin{pmatrix}0&0&3\\0&4&0\\3&0&0\end{pmatrix}$$が求める行列となる。
問題.2 解答
(1) 正しくない。
(反例)\(A=\begin{pmatrix}1&-1\\0&1\end{pmatrix}\) と \(B=\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}\) とすると、$$AB=\begin{pmatrix}1&-1\\0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&2\\1&-1\end{pmatrix}、$$$$BA=\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&-1\\0&1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&0\\1&-2\end{pmatrix}$$より、\(AB \ne BA\) したがって、この場合$$(A+B)^{2}=A^{2}+AB+BA+B^{2}$$ が正しい展開であり、\((A+B)=A^{2}+2AB+B^{2}\) とはならない。
(2) 正しくない。
(反例)\(A=\begin{pmatrix}1&0\\0&0\end{pmatrix}\) とすると、$$A^{2}=\begin{pmatrix}1&0\\0&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&0\\0&0\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&0\\0&0\end{pmatrix}=A$$
となって、\(A^{2}=A\) を満たすが、\(A\) は \(O\) 行列でも \(E\)(単位行列)でもない。
つまり、\(A^{2}=A\) ならば、\(A=O or A=E\) は一般には言えない。
(3) 正しくない。
(反例)\(A=\begin{pmatrix}1&2\\2&-1\end{pmatrix}\) と \(B=\begin{pmatrix}-1&1\\1&1\end{pmatrix}\) とすると、
\(^{t}A=A\) かつ \(^{t}B=B\) を満たすので、\(A、B\) はいずれも対称行列である。ここで一般に、$$^{t}(AB)=(^{t}B)(^{t}A)$$となるので、$$^{t}(AB)=(^{t}B)(^{t}A)=BA$$しかし、$$AB=\begin{pmatrix}1&2\\2&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}-1&1\\1&1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&3\\-3&1\end{pmatrix}$$
$$BA=\begin{pmatrix}-1&1\\1&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&2\\2&-1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&-3\\3&1\end{pmatrix}$$
より、(1)で見たように\(AB \ne BA\) である。つまり、\(^{t}(AB)=AB\) は成り立たない。したがって、\(A、B\) がともに対称行列ならば、\(AB\) も対称行列であるという主張は、一般には成り立たない。
問題.3 解答
\(T\) のべき乗をいくつか計算してみると、
\begin{split}
T^{2}&=\begin{pmatrix}A&A\\O&-A\end{pmatrix}\begin{pmatrix}A&A\\O&-A\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}A^{2}&O\\O&A^{2}\end{pmatrix}、\\
T^{3}&=T^{2}T=\begin{pmatrix}A^{2}&O\\O&A^{2}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}A&A\\O&-A\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}A^{3}&A^{3}\\O&-A^{3}\end{pmatrix}、\\
T^{4}&=T^{3}T=\begin{pmatrix}A^{3}&A^{3}\\O&-A^{3}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}A&A\\O&-A\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}A^{4}&O\\O&A^{4}\end{pmatrix}、\\
T^{5}&=T^{4}T=\begin{pmatrix}A^{4}&O\\O&A^{4}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}A&A\\O&-A\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}A^{5}&A^{5}\\O&-A^{5}\end{pmatrix}、\\
\cdots \end{split}よって、$$T^{n}=\begin{cases} \begin{pmatrix}A^{n}&O\\O&A^{n}\end{pmatrix} (n:偶数) \\ \begin{pmatrix}A^{n}&A^{n}\\O&-A^{n}\end{pmatrix} (n:奇数)\end{cases} がいえる。$$これより、\(n\) は偶数でなければならないことがわかる。
次に、\(A\) のべき乗をいくつか計算してみる。
\begin{split}
A^{2}&=\begin{pmatrix}-2&-2\\2&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}-2&-2\\2&0\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&4\\-4&-4\end{pmatrix}、\\
A^{3}&=A^{2}A=\begin{pmatrix}0&4\\-4&-4\end{pmatrix}\begin{pmatrix}-2&-2\\2&0\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}8&0\\0&8\end{pmatrix}=8E=2^{3}E \end{split}
よって、$$A^{4}=2^{3}A$$$$A^{5}=2^{3}A^{2}$$$$A^{6}=2^{3}A^{3}=2^{6}E$$より、\(n\) が3の倍数のとき、\(A^{n}=2^{n}E\) と書けることがわかる。
したがって、求める \(n\) は偶数かつ3の倍数である自然数のうち最小の6となる。
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