(続) 指数関数の微分
やあ、こんにちは。今回は前回の続きである指数関数の微分についてやっていこう。
はい、よろしくお願いします!
さて、前回我々は自然対数の底なるものを定義し、それを用いて指数関数
$$f(x)=\mathrm{e}^{x}\ を定め、重要な性質\ (\mathrm{e}^{x})’=\mathrm{e}^{x}$$
が成り立つことを見たのであったな。
微分した関数、つまり導関数が自分自身という驚きの性質をもった関数でした。
この関数 \(f(x)=\mathrm{e}^{x}\) には名前があって、exponential functionというのだ。exponential(イクスポネンシャル)は指数、function(ファンクション)は関数を表す英語だ。名前があった方が便利なのでこの授業では略してexp(イーエックスピー)と呼ぶことにしよう。さて、今回このexpを利用して一般の指数関数 \(f(x)=a^{x}\) を微分するのだが、そのためにはどうしてもあと一つ道具が必要となるのだ。
その道具とは一体何ですか?
合成関数の微分
それは、合成関数の微分という道具なんだ。合成関数の微分公式と言ってもいいが、公式というよりはテクニックに近いと思うのであえて道具と読んでいるぞ。これが、微分に関する最後の道具だと思っていいぞ。まずは、合成関数がどういうものなのかをしっかり理解することが大切だ。合成関数とは、ある関数にある関数が代入された形になっている関数のことだ。
関数に関数が代入された形ですか?
ああ、つまり二つの関数 \(f(x)\) と \(g(x)\) があって、どちらでもよいが一方に一方が代入された \(g(f(x))\) や \(f(g(x))\) で定められた関数のことを言うのだ。下の具体例を見てほしい。
この例から分かるように一般には、
$$g(f(x)) \ne f(g(x))$$
であることに注意してくれ。
数学の言葉で関数の合成は交換法則が成り立たない、と言うこともある。
ふむふむ。
さて、合成関数の微分とは読んで字のごとく、上の例のような合成関数を効率よく微分するための計算なのだ。まずはこれがどういうものなのかを紹介しよう。上の(例1)
\(f(x)=x-1\ ,\ g(x)=x^{2}+x+1\) のとき、
\(g(f(x))=(x-1)^{2}+(x-1)+1=(x^{2}-2x+1)+x=x^{2}-x+1\) を使ってやってみよう。
ヒロト、この関数 \(g(f(x))=x^{2}-x+1\) をとりあえず微分してみてくれ。
はい、多項式の微分はもう極めています。
うむ、正解だ。では、次にこの関数 \(g(f(x))\) にあえて合成関数の微分を適用してみる。合成関数として微分するには次の公式を適用する。
公式の右辺において、\(g(u)\) は \(u=f(x)\) と置いたときの \(u\) の関数である。つまり、もともとの形の \(g(x)\) の \(x\) を \(u\) に書き換えたものに他ならない。この公式を用いると次のように計算されるのだ。
どうだ!同じ結果になっただろう?
すみません、なんか面倒になったように思うのですが・・・
そう思うのは、ヒロトが微分したのは \(g(f(x))\) を計算して整理した後だからだ。合成関数の微分公式を用いた計算では \(g(f(x))\) を計算して整理する必要がなく、いきなり微分計算を始められることができるのだ!もっと強力な具体例をお見せしよう。ヒロトよ、\(f(x)=(2x+100)^{10}\) を微分せよと言われたらどうする?
これは、 \((2x+100)^{10}\) を展開して多項式の形に直しさえすれば、できると思うのですが、とても現実的ではないですね。
合成関数の微分の威力
ふふふ、そうだろう?この関数に合成関数の微分を適用すれば、もはや暗算で計算できるレベルになるのだ。合成関数の微分法は関数によっては最強の武器と化すのだ!
暗算でできるのですか!それはシンプルにすごいですね!
合成関数の微分を適用するためには、まず与えられた関数が合成関数となっていなくては話にならない。なので、今回の関数 \(f(x)=(2x+100)^{10}\) がある関数 \(g(x)\) にある関数 \(f(x)\) が代入された関数になっていることを見抜かなければならない。その際、\(g(x)\) と \(f(x)\) の定め方に決まりはない。どうだ?自分で見つけることができるかな?
はい!すぐに見えました!
\(g(x)=x^{10}\) に \(f(x)=2x+100\) が代入された合成関数とみなすことができます。
うむ、素晴らしい!
では、この合成関数に、合成関数の微分公式を適用するとどうなる?
先ほどの公式通りやるということですよね?
すごい!本当に簡単にできちゃった!
うむ、完璧だ!このように与えられた関数が、合成関数になっていることを見ぬくことできたならば、ぜひ使うべき計算法なのだ!
はい!とても強力な計算法だということはよく分かりました!
でもまだ、合成関数の微分公式の証明をしていませんよね?
うむ。とりあえず使い方を知ってもらったということだな。証明は、とても常人には気づかないテクニックを使っている。じっくり説明していくので頑張ってついてきてくれ。
合成関数の微分公式の証明
うわー!本当にテクニカルな証明ですね!微分の定義式を何とかして作ろうという、その工夫が常人の能力を超えています!
最後の一山
うむ、こういうときは以前も言ったが、心穏やかに芸術作品でも見るような心境で眺めればいいのだ。いずれにしても、これで晴れて合成関数の微分公式がつかえるようになったぞ!さて、我々の本来の目的を思い出そう。我々は、一般の指数関数 \(y=a^{x}\) を \(y=\mathrm{e}^{x}\) を用いて微分するということであった。さあ、最後の一山を超えて今回を締めくくろうじゃないか!
うーん、何かヒントを下さい!
ああ、いいだろう!いいかい?すべての関数に対していえることなのだが、次の変形法を使うのだ。
ちなみに、対数関数の底が書かれてないとき、その底は \(\mathrm{e}\) とするという約束がある。したがってこの等式は、対数関数の定義から明らかな式である。
よろしいか?この変形法を使うと、一般の指数関数はどうなるかやってごらん!
はい、やってみます!
えっと、こうなりました!
すると、これが合成関数になっていることはすぐ分かるな?また自分で見つけてごらん。そして、分かったらそれに合成関数の微分公式を適用して結果を求めてみよう!
はい!えーと、ふむふむ、なるほど確かに合成関数となっていますね!では、やってみます!
指数関数の微分の結論
出来ました!結果は
$$(a^{x})’=a^{x}\log a$$
です!
正解だ!今回は、いろいろな内容が盛りだくさんで長く険しい道だったが最後までよく頑張ったな。今回、合成関数の微分公式をゲットしたので次回はかなり楽に進められるだろう。では、今日はここまでにしよう。お疲れさん。
とても疲れました!しっかり復習しなくちゃ。今日もありがとうございました!
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