先生、教えて❕ ~微分積分編~ (第六回)

微分積分編

『積の微分公式』から得られる公式たち

\(x^{n}\) の微分公式

マサト先生
マサト先生

やあ、こんにちは。今回は『積の微分公式』を用いていくつかの公式を得ようと思う。

ヒロト
ヒロト

はい、よろしくお願いします!

マサト先生
マサト先生

まずは、一つ目として

$$(x^{n})’=nx^{n-1}$$

を示してみよう。ここで、\(n\) は任意の自然数だ。

ヒロト
ヒロト

以前、練習問題で \(x’=1\ ,\ (x^{2})’=2x\ ,\ (x^{3})’=3x^{2}\) などを計算しました。その一般化ですね!

マサト先生
マサト先生

そういうことだ。これを『積の公式』を用いて示すのだ。

ヒントは帰納法を使うぞ。

ヒロト
ヒロト

ふむふむ、帰納法ですね。帰納法は型が決まっているので得意です!

ヒロトノート

\(n=1\) のときは既に見た通り \(x’=1\ (=1x^{1-1})\)となって成り立つ。
\(n=k\ (kは自然数)\) のとき成り立つと仮定して \(n=k+1\) の場合を計算すると、

$$(x^{k+1})’=\cdots\ \cdots$$

ヒロト
ヒロト

いつも通り詰まってしまいました・・・

マサト先生
マサト先生

まだ積の微分公式を使ってないな。何とかして使ってみよう!

さて、どうする?ここが腕の見せ所だぞ!

ヒロト
ヒロト

うーん、だってそもそも二つの関数の積の形になってないし・・・いや待てよ、積の形にできるかも!

ヒロトノート

\(x^{k+1}=\) は \(x\) を \(k+1\) 回かけたものだから、\(x\cdot x^{k}\) という二つの関数の積の形にできる。これに、積の微分公式を適用すると、

$$(x^{k+1})’=(x\cdot x^{k})’=x’\cdot x^{k}+x\cdot (x^{k})’$$

帰納法の仮定により、 \((x^{k})’=kx^{k-1}\) は成り立つので、上式は

$$(上式)=x^{k}+x\cdot kx^{k-1}=x^{k}+kx^{k}=(k+1)x^{k}$$

すなわち、\((x^{k+1})’=(k+1)x^{(k+1)-1}\) となって \(n=k+1\) の場合も成り立つ。

以上により、すべての自然数 \(n\) に対して \((x^{n})’=nx^{n-1}\) は成り立つ。

マサト先生
マサト先生

完璧すぎてほれぼれすっぞ!

ヒロト
ヒロト

ありがとうございます。ヒントのおかげです!

マサト先生
マサト先生

その調子で次の公式もいってみよう!


 


商の微分公式

マサト先生
マサト先生

次の公式は『商の微分公式』という商の形の関数を微分するときに使われる公式だ。つまり

$$\left\{\frac{f(x)}{g(x)}\right\}^{\prime}=\frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^{2}}$$

である。

ヒロト
ヒロト

商は『割り算の結果』を表すのでしたよね。この公式は複雑で難しそうですね。

マサト先生
マサト先生

これも『積の微分公式』をつかうために、

$$\frac{f(x)}{g(x)}=f(x)\cdot\frac{1}{g(x)}$$

のように二つの関数の積だと考えるんだ。

ヒロト
ヒロト

なるほど、割り算は掛け算で表されますからね!

すると、積の微分公式から・・

ヒロトノート

$$\left\{\frac{f(x)}{g(x)}\right\}^{\prime}=\left\{f(x) \cdot \frac{1}{g(x)}\right\}^{\prime}$$

$$=f'(x) \cdot \frac{1}{g(x)}+f(x) \cdot \left\{\frac{1}{g(x)}\right\}^{\prime}$$

$$=\frac{f'(x)}{g(x)}+\frac{f(x)}{g'(x)}$$

$$=\frac{f'(x)g'(x)+f(x)g(x)}{g(x)g'(x)}$$

ヒロト
ヒロト

あれ、目標の式である

$$\frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^{2}}$$

にならないや。なんでだろう?


 


マサト先生
マサト先生

2行目から3行目の計算で

$$\left\{\frac{1}{g(x)}\right\}^{\prime}=\frac{1}{g'(x)}$$

とやってしまっているだろう?ここが間違いなんだ。これを正しく計算するためにはしっかり定義からもとめる必要があるのだ。ここが『商の微分公式』の証明の核となる部分だ。

ヒロト
ヒロト

微分の定義式はすべての公式の生みの親だと言ってましたよね!

いつものように

$$F(x)=\frac{1}{g(x)}$$

とおいて始めてみます。

ヒロトノート

$$F'(x)=\lim_{h \to 0}\frac{F(x+h)-F(x)}{h}$$

$$=\lim_{h \to 0}\frac{\frac{1}{g(x+h)}-\frac{1}{g(x)}}{h}$$

ヒロト
ヒロト

うーん、やっぱり難しいぞ。ここからどう進めるのかな?

マサト先生
マサト先生

できることをやってみるといい。

分数は通分して、なんとか定義式の形を作っていくのだ。つまり、分子の分数を通分すると

$$\frac{1}{g(x+h)}-\frac{1}{g(x)}=\frac{g(x)-g(x+h)}{g(x+h)g(x)}$$

となるな。後は自分でやってみてくれ!

ヒロト
ヒロト

はい!続きは・・

ヒロトノート

$$\lim_{h \to 0}\frac{\frac{1}{g(x+h)}-\frac{1}{g(x)}}{h}$$

$$=\lim_{h \to 0}\frac{\frac{g(x)-g(x+h)}{g(x+h)g(x)}}{h}$$

$$=\lim_{h \to 0}\frac{g(x)-g(x+h)}{hg(x+h)g(x)}$$

ヒロト
ヒロト

うーむ、何が何やら・・・とりあえずここまで合ってますか?

もう少しヒントをください!

マサト先生
マサト先生

うむ、しっかり合っているぞ!ここから先の計算は前回伝えた、関数の積に対する \(\lim_{h \to 0}\) の分配を考えてみてくれ。そのために分数を

$$\frac{g(x)-g(x+h)}{hg(x+h)g(x)}=\frac{g(x)-g(x+h)}{h}\cdot\frac{1}{g(x+h)g(x)}$$

と積の形にするのだ。後は自分でやってみてくれ。

ヒロト
ヒロト

ああ、そうか。\(\lim_{h \to 0}\) は分配できるのでしたね。

そうすると・・・ こうかな・・


 


ヒロトノート

$$=\lim_{h \to 0}\frac{g(x)-g(x+h)}{hg(x+h)g(x)}$$

$$=\lim_{h \to 0}\left\{\frac{g(x)-g(x+h)}{h}\cdot\frac{1}{g(x+h)g(x)}\right\}$$

$$=\left\{\lim_{h \to 0}\frac{g(x)-g(x+h)}{h}\right\}\cdot\left\{\lim_{h \to 0}\frac{1}{g(x+h)g(x)}\right\}$$

$$=\left\{-\lim_{h \to 0}\frac{g(x+h)-g(x)}{h}\right\}\cdot\left\{\lim_{h \to 0}\frac{1}{g(x+h)g(x)}\right\}$$

$$=-g'(x)\cdot\frac{1}{\{g(x)\}^{2}}=-\frac{g'(x)}{\{g(x)\}^{2}}$$

したがって、

$$\left\{\frac{1}{g(x)}\right\}^{\prime}=-\frac{g'(x)}{\{g(x)\}^{2}}$$

ヒロト
ヒロト

なんかできたっぽいです!

マサト先生
マサト先生

よく頑張ったな!正解だ!

これと先ほどの積の微分公式を合わせると商の微分公式が得られるぞ!

さあ、仕上げをやってみてくれ。

ヒロト
ヒロト

はい、もう一度最初からやってみます!


 


ヒロトノート

$$\left\{\frac{f(x)}{g(x)}\right\}^{\prime}=\left\{f(x) \cdot \frac{1}{g(x)}\right\}^{\prime}$$

$$=f'(x) \cdot \frac{1}{g(x)}+f(x) \cdot \left\{\frac{1}{g(x)}\right\}^{\prime}$$

ここで、上で得た

$$\left\{\frac{1}{g(x)}\right\}^{\prime}=-\frac{g'(x)}{\{g(x)\}^{2}}$$

を代入して、

$$=f'(x) \cdot \frac{1}{g(x)}-f(x) \cdot \frac{g'(x)}{\{g(x)\}^{2}}$$

$$=\frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^{2}}$$

ヒロト
ヒロト

目標となる式が出てきました!

マサト先生
マサト先生

完璧だ!これで、『商の微分公式』も得られたわけだ。

商の微分公式

$$\left\{\frac{f(x)}{g(x)}\right\}^{\prime}=\frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^{2}}$$

マサト先生
マサト先生

今回は『積の微分公式』を用いて二つの公式を得た。

かなり大変だったがよく頑張ったな!

次回は少し問題演習をしていこう!

今日はここまでだ、お疲れさん。

ヒロト
ヒロト

証明ばかりで大変ですが、その分達成感が大きいです。

今日もありがとうございました!


 

コメント

タイトルとURLをコピーしました