積の微分公式

やあ、こんにちは。今回は『積の微分公式』について学んでいこう!

はい!よろしくお願いします。

さっそく今回証明する一つ目の微分公式を紹介しよう。
$$\{f(x)g(x)\}’=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$$

これはちょっと不思議な感じがしますね。普通に考えると
$$\{f(x)g(x)\}’=f'(x)g'(x)$$
となると思われるのですが違うのですね?

鋭い指摘だな!なぜそうなるのかは証明をすることによって明らかになるぞ。
さっそく証明をスタートしてみよう!
突破困難な壁


前回と同様に \(F(x)=f(x)g(x)\) とおいてスタートするのがポイントでしたね。
$$F^{\prime}(x)=\lim_{h \to 0}\frac{F(x+h)-F(x)}{h}$$
$$=\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x)}{h}$$

うーん、この後はどうするのだろう?

ふふふ、確かにここからどうするのかは難しい問題だ。自力で気づく人はまずいないだろう。
まあ、昔の偉人の誰かが最初に気づいて突破したのは間違いないな。このような突破困難な壁にぶつかったら、謙虚な気持ちで証明を見て、その方法に感動し理解すればいいんだよ。あと感謝の気持ちも忘れずにな!

ちょっと悔しいですが、これ以上進めなくなるよりいいですね。

うむ、まれに生まれる天才たちが苦心を重ねて突破してきた道を、我々が自力で突破し続けるのは至難の業というものだ。さて、結論を言うと分子に次の式を足すことで突破できるぞ。
$$f(x+h)g(x)-f(x+h)g(x)$$

ん?これは同じ式の差になっているので、\(0\) に等しいですよね?

その通り!つまり、分子に \(0\) を足すので実質何も変わらないということだ。したがって、イコールで繋ぐことができるのだ!

これで本当にうまくいくのですか?

やってみれば分かるぞ!共通因数でくくったりしながらうまい具合に微分の定義式を作っていくのだ。ちょっと自分でやってみてくれ!

はい!頑張ります!

『積の微分公式』の証明
$$F^{\prime}(x)=\lim_{h \to 0}\frac{F(x+h)-F(x)}{h}$$
$$=\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x)}{h}$$
ここで、分子に \(f(x+h)g(x)-f(x+h)g(x)\ (=0)\) を加えて、
$$=\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x)+f(x+h)g(x)-f(x+h)g(x)}{h}$$
分子の第2項と第3項を \(g(x)\) でくくり、また第1項と第4項を \(f(x+h)\) でくくって、
$$=\lim_{h \to 0}\frac{\{f(x+h)-f(x)\}g(x)+f(x+h)\{g(x+h)-g(x)\}}{h}$$
\(\lim_{h \to 0}\) は問題なく分配できるということだったので分配して、
$$=\lim_{h \to 0}\frac{\{f(x+h)-f(x)\}g(x)}{h}+\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)\{g(x+h)-g(x)\}}{h}$$

ここまで出来ました!合ってますか?

素晴らしい!ゴールまであと一歩だぞ。
ここで \(\lim_{h \to 0}\) の性質について追加したいことがある。
つまり、\(\lim_{h \to 0}f(x)\) と \(\lim_{h \to 0}g(x)\) が存在するとき、積についても
\(\lim_{h \to 0}\{f(x)g(x)\}=\{\lim_{h \to 0}f(x)\}\{\lim_{h \to 0}g(x)\}\) と分配できるという性質だ。そして、大事なことは我々が考える関数たちについては問題なく分配できると考えていいということだ。

ということは・・
$$\lim_{h \to 0}\frac{\{f(x+h)-f(x)\}g(x)}{h}+\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)\{g(x+h)-g(x)\}}{h}$$
$$=\left\{\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\right\}\left\{\lim_{h \to 0}g(x)\right\}+\left\{\lim_{h \to 0}f(x+h)\right\}\left\{\lim_{h \to 0}\frac{g(x+h)-g(x)}{h}\right\}$$
ここで、$$\lim_{h \to 0}g(x)=g(x)\ ,\ \lim_{h \to 0}f(x+h)=f(x)$$
となるので、
$$(上式)=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$$

できました!本当に \(f'(x)g(x)+f(x)g'(x)\) が出てきた!

完璧だ!証明をしてみると、なるべくして \(f'(x)g(x)+f(x)g'(x)\) の形になったことが分かるな。さあ我々は今、強力な微分公式を手に入れた。これを用いていくつかの重要な微分公式が生み出されるのだ!
$$\{f(x)g(x)\}’=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$$

証明した公式を用いて、新しい公式が証明される・・・理論が出来上がっていくとは正にこのことですね!

ああ、そうだな。
さて、今回はここまでにしよう。今回は『積の微分公式』という強力な武器を手に入れたぞ!
では、今日もお疲れさん。

はい、ありがとうございました!
ティーブレイク

以前、ニュートンが微分積分の創始者だと言ったが、実は同時期にドイツのライプニッツも同じ概念に達していた。その当時、どちらが先に発見したかを証明するのはとても困難なことであった。これが原因で二人はかなり争ったという記録がある。
いずれにせよ、後の数学者たちによって概念や記号が整理され、本になって出版されることになる。現在われわれが使用する教科書に載っている微分・積分の記号はライプニッツが創作したものを採用している。ライプニッツは『万能の人』と呼ばれる大天才であり、記号についても深く考察し、非常に使い勝手の良い記号を創ったのだ。
後々、関数の微分 \(f'(x)\) を
$$\frac{d}{dx}f(x)$$
で表すがこれはライプニッツの考えた記法である。
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