瞬間の速さの復習
こんにちは、前回に引き続き微分について学んでいこう!
第2回の目的は、数学的な微分の定義を与えることだ!
はい、よろしくお願いします!
前回は、微分とは『瞬間の速さ』の計算法だということを学びました。
そうだったな、前回の \(x=1\) における瞬間の速さの計算を思い出してほしい。
その中に全ての答えはあるのだ。
はい、\(x=1\) からわずかに時間をずらして計算するのでした。
そして、そのずらす時間を \(h\) として計算するのがコツでしたね!
うむ、しっかり身についているな。文字 \(h\) を用いて計算することによって、結果はどうなった?
はい、結果は \(50+25h\) となりました。そして、この \(h\) をどんどん短い時間にして \(x=1\) における瞬間の速さ \(50\) を求めたのでした!
極限計算と極限値
実は大切なのは結果よりも『 式 』の方なのだ。
上の結果 \(50+25h\) を求めるための式をあえて書いてみてくれ。
\(50+25h\) を求めるための式ですね。元の関数が \(f(x)=25x^{2}\) で、平均の速さを基に計算したから、次のようになります。
うむ、正解だ。それから、ずらした時間 \(h\) をどんどん小さくしていった。言い方を換えると、限りなく0に近づけていったな。そこで、この『\(h\) を限りなく \(0\) に限りなく近づけていく』という計算というか操作を、
$$\lim_{h \to 0}$$
という記号で表すことにする。
『操作』を表す記号なんて、そんなのありなんですね!
もちろん、ありだ。我々が使っている『+』や『-』の記号だって『足すこと』や『引くこと』の操作を表すだろう!少し複雑になっただけでそれと同じことだ。
なるほど!
limというのは普通に『リム』と呼んでいいのですか?
まあ、それでもかまわないが、正式には『リミット』と読むのだ。
限界を表す英単語『 \(limit\)』から取ったのだ。
$$\lim_{h \to 0}$$
は『リミット \(h\) が \(0\)』と読めば問題ないだろう。
ふむふむ。
この『lim』を用いた計算を『極限計算』というのだ。そして、『lim』をもちいて計算した値のことを『極限値』というのだ。これからこれらの言葉を使うからおぼいておいてくれ。
『極限計算』に『極限値』ですね、分かりました。
さて、この新しい記号を使うと、瞬間の速さを求めるための式は次のように書ける。
$$\lim_{h \to 0}\frac{25(1+h)^2-25}{(1+h)-1}$$
分数部分は既に \(50+25h\) となることは計算済みだったな。なので次のように書ける。
$$\lim_{h \to 0}\frac{25(1+h)^2-25}{(1+h)-1}=\lim_{h \to 0}(50+25h)$$
このように分数部分を計算してから『 \(\lim_{h \to 0}\) 』を発動させるぞ。\(50+25h\) の \(h\) を限りなく \(0\) に近づけると\(50+25h\) の値はどうなる?
\(25h\) が \(0\) に近づいていくのでこれは第一回で求めた通り瞬間の速さは \(50\) となります。先ほどの言葉を使うと、極限値が \(50\) ということです。
『極限計算』と『代入』の違い
でも先生、『\(h\) を限りなく \(0\) に近づけていく操作』と言っていましたが、結果だけ見ると 『\(h\) に \(0\) を代入』しているだけですよね?
その通りだ。結局は \(h=0\) を代入した結果と一致する。これは事実だ。
しかし、単に代入するのとは意味が違うのだ。
『\(h\) を限りなく \(0\) に限りなく近づけていく』というのはあくまで近づけていくだけで決して \(0\) に一致させないということなのだ。これは、絶対に忘れてはならない極限計算のルールなのだ。
代入と同じだと何か問題があるんですか?
結果は同じなのに・・・。
良い質問だ。実は大きな問題があるんだ。上の例では分母の \(h\) が計算途中で消えたから特に問題は出なかったが、問題によっては分母に \(h\) がある極限計算をしなくてはいけないことがあるのだ。例えば次の例を見てくれ。
$$\lim_{h \to 0}\frac{\sin h}{h}$$
これは、とても有名かつ重要な極限計算なのだが、実はこの式の値は \(1\) となるのだ。
全くわかりませんが、そうなんですね。
ああ、もちろん今は分からなくていいぞ!後々しっかりやるつもりだ。
ところでもし、\(\lim_{h \to 0}\) が単に代入するという事なら、この極限計算は意味を持たないことは分かるか?
あ、分母が \(0\) になってしまいます。
そのとおり、もしlimが代入と同じならこの極限計算は計算すらできない意味のない式となってしまう。しかし、\(0\) にならないように近づけていくだけならしっかりと \(1\) という値を持つことが示されるのだ。これが『極限計算の妙』というものだ。
実際に極限値が1になることを見てみないと何とも言えませんが、単に代入するのとは違うことはなんとなく分かりました。
うむ、今はそれで十分だ!
では、微分の数学的な定義を与える準備が整ったのでこれから始めるぞ!
微分の数学的定義
数学的な微分とはざっくり言うと、一般の関数に対して『瞬間の速さ』の計算法を適用したものなのだ。
一般の関数ですか?
ああ、数学において一般の関数は、
$$y=f(x)$$
と書くことは知っているだろう?上で考えていた関数は
$$f(x)=25x^{2}$$
の場合となっているぞ。
\(f(x)\) はいわば関数の代表みたいなものですね!
『関数の代表』良い例えだ!
そして、この関数 \(f(x)=25x^{2}\) に対する瞬間の速さを求める式は下のようになったな。
$$\lim_{h \to 0}\frac{25(1+h)^2-25}{(1+h)-1}\ \cdots\ ①$$
①を、\(f(x)\) を用いて書き換えてやるとどうなる?
はい、ノートに書きますね。
うむ、正解だ!
これが、 \(x=1\) において関数 \(f(x)\) を微分するための計算式なのだ!
微分って瞬間の速さの計算そのものだったんですね!
まあ見た目はそうだが、今考えている関数は一般の関数だからもはや
『瞬間の速さ』というわけにはいかないだろう?
確かに!\(x\) が時間で、\(y\) が距離を表すとは限りませんからね。
そこで、この②を計算して得た値を『\(x=1\) における \(f(x)\) の微分係数』ということにしたのだ。記号では \(f^{\prime}(1)\) と書くことにしたのだ。
グラフの世界における微分係数の意味
微分係数ですね。\(f^{\prime}(1)\) は『エフダッシュ1』と読めばいいのですか?
うん、それでいい。ただ、『エフプライム1』と読む流儀もあるから覚えておいてくれ。
分かりました。微分係数は物理的には瞬間の速さを表すという理解でいいですね?
そういうことだ。そして、第1回で見たように瞬間の速さはグラフの世界ではある点における『接線の傾き』を表したことは覚えているだろう?
はい、覚えています。\(h\) をどんどん小さくしていくと、2点を結ぶ直線の傾きの大きさである平均の速さは、ある1点における接線の傾きになりました。
なので、数学的な概念である微分係数も、グラフの世界においては『接線の傾き』を表しているのだ。そこに物理的な意味はなく、単に『接線の傾き』だ。
なるほど、数学的には微分係数は接線の傾きに対応しているのですね。
そういうことだ。さて、この辺で少し問題演習をしよう!以下の具体的な関数について、与えられた \(x\) の値における微分係数を計算してみよう。
練習問題(微分係数)
問題
次の関数 \(f(x)\) について、与えられた \(x\) の値における微分係数を求めよ。
(1) \(f(x)=2x+1\ (x=1)\)
(2) \(f(x)=x^{2}\ (x=2)\)
(3) \(f(x)=x^{2}+2x+1\ (x=1)\)
解答
$$=\lim_{h \to 0}\frac{2+2h+1-3}{h}=\lim_{h \to 0}\frac{2h}{h}=\lim_{h \to 0}2=2$$
$$=\lim_{h \to 0}\frac{(4+4h+h^{2})-4}{h}=\lim_{h \to 0}\frac{4h+h^{2}}{h}=\lim_{h \to 0}(4+h)=4$$
$$=\lim_{h \to 0}\frac{(1+2h+h^{2}+2+2h+1)-4}{h}=\lim_{h \to 0}\frac{4h+h^{2}}{h}=\lim_{h \to 0}(4+h)=4$$
さて、長かった第2回はここまでにしよう。次回は、『導関数』という関数についてやろうと思う。
はい、今日はありがとうございました!
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