導関数
やあ、こんにちは。第3回は『導関数』という関数について学ぼう。
前回の第2回は、微分係数の計算について学びましたね。
ああ、そうだ。前回、例えば \(x=1\) における関数 \(f(x)\) の微分係数というものを計算したな。そして、\(x=1\) において微分係数を求めることを \(x=1\) において微分するというのであった。ここまでよろしいか?
はい、そうでしたね。
\(x=1\) 以外の任意の数、例えば \(x=2\) や \(x=\sqrt{2}\) や \(x=\pi\) に対しても同様の計算をすることによってその数における微分係数が求められるだろう?
はい、求められると思います。
要するに、一つの \(x\) の値に対して、一つの微分係数の値が決まるだろう?
はい、そういうことになりますね!
これは、ある『数学的対象』が定まったことを意味するがそれは何かわかるかな?
ある数学的対象ですか?
うーん、いきなり質問の難易度が上がった気がします・・・。
一つの \(x\) に対して、一つの \(y\) が決まる、もっと簡潔に言えば、
\(x\) と \(y\) が『1:1に対応する』と理解してもいい。これから生まれる数学的対象は、数学の中で最も重要な概念の一つだからここでしっかりと理解してほしい。
はい、しっかり理解します!
一つの \(x\) に対して、一つの \(y\) が決まるという規則が定まったとき、数学では『関数が定まった』というのだ。つまり、答えは『関数』だ。
関数、そうかー!
1次関数や2次関数はよく知っているのに、関数それ自体の定義はしっかり理解していなかった気がします。
まあ、大体はそんなものだ。
次の1次関数や2次関数もしっかり関数の定義を満たしているだろう?
例えば、\(f(x)=x+1\) という1次関数は、
\begin{split}
x=1に対して、y=2\\
x=2に対して、y=3\\
\vdots
\end{split}
また、\(f(x)=x^{2}+2x-1\) という2次関数は、
\begin{split}
x=1に対して、y=2\\
x=2に対して、y=7\\
\vdots
\end{split}
・・という風に一つの \(x\) の値に対して一つの \(y\) の値が決まっているな。これらと同じように、一つの実数に対して、一つの微分係数を与えてくれる関数のことを \(f(x)\) の『導関数』といい、記号では \(f^{\prime}(x)\) と書く。そして、 \(f(x)\) の導関数を求めることを、 \(f(x)\) を微分するというのだ。式で書くと次のようになる。
$$f^{\prime}(x)=\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}$$
導関数を求めることを『微分する』というのですね。\(f^{\prime}(x)\) は第2回で習ったように、『エフダッシュエックス』あるいは『エフプライムエックス』と読んでいいですよね?
ああ、その通りだ。さて、導関数の \(x\) に \(x=1\) を代入すると、 \(x=1\) における微分係数となるし、\(x=2\) を代入すれば \(x=2\) における微分係数となって、確かに \(x\) の関数になっていることが分かるな。
$$x=1のとき、f^{\prime}(1)=\lim_{h \to 0}\frac{f(1+h)-f(1)}{h}\ \ (x=1における微分係数)$$
$$x=2のとき、f^{\prime}(2)=\lim_{h \to 0}\frac{f(2+h)-f(2)}{h}\ \ (x=2における微分係数)$$
はい、確かに一つの \(x\) に対して一つの微分係数が決まっていますね。
導関数は、 \(x\) の値に対して『微分係数』を与えてくれる関数だということがよく分かりました。
導関数を求める計算は、前回やった微分係数の計算とほとんど同じくできる。
少し練習してみよう!
練習問題(導関数)
問題
次の関数を微分せよ。
(1) \(f(x)=x\)
(2) \(f(x)=x^{2}\)
(3) \(f(x)=x^{3}\)
(4) \(f(x)=c\ \ (c\ は定数)\) つまり、\(f(x)\) は定数関数である。
解答
$$=\lim_{h \to 0}\frac{h}{h}=\lim_{h \to 0}1=1$$
$$よって、(x)^{\prime}=1$$
$$=\lim_{h \to 0}\frac{(x^{2}+2hx+h^{2})-x^{2}}{h}=\lim_{h \to 0}\frac{2hx+h^{2}}{h}=\lim_{h \to 0}(2x+h)=2x$$
$$よって、(x^{2})^{\prime}=2x$$
$$=\lim_{h \to 0}\frac{(x^{3}+3x^{2}h+3xh^{2}+h^{3})-x^{3}}{h}$$
$$=\lim_{h \to 0}\frac{3x^{2}h+3xh^{2}+h^{3}}{h}=\lim_{h \to 0}(3x^{2}+3xh+h^{2})=3x^{2}$$
$$よって、(x^{3})^{\prime}=3x^{2}$$
確かに微分係数の計算とほとんど同じですね!
分数部分を計算してから『リミット発動!』っていう。
そして、(4)の定数関数の微分はすべて \(0\) だということも分かりました。
ああ、そうだな。実際に計算することによって色々見えてくるだろう。
ところで、上の4問の計算をして他に何か気づいたことはあったか?
何でもいいぞ。
うーん、\((c)^{\prime}=1\)、\((x)^{\prime}=1\)、\((x^{2})^{\prime}=2x\)、\((x^{3})^{\prime}=3x^{2}\) となったことは分かったけど・・・あっ!次数が1だけ小さくなっていますね!ここで、定数の次数は \(0\) だと考えます。
そこに気づくとは流石だ!
そうだ、次数が一つ下がっている。これは数学的には『次元』が1だけ下がったとも言うのだ。
つまり、微分は『次元を1だけ下げてくれる計算』と言うこともできるのだ。この事実は今後関数を分析する際に重要な役割を演じることになるのだ。ぜひ覚えておいてくれ。
分かりました!
では、第3回はここまでにしよう。次回は『微分の性質』について学ぶぞ。
少し本格的になってくるからそのつもりでいてくれ。
はい、ありがとうございました!
ティーブレイク
例えば、正方形の一辺の長さが与えられればその正方形の面積が計算できるように、変化する量の間に成り立つ関係を表すのが関数である。古代では二つの量の間の関係を『数表』を用いて表すことをしていた。その後、文字式が用いられるようになりドイツの天才『ライプニッツ』によって、『関数』という言葉が創られた。
そして、ライプニッツの弟子の弟子にあたる『レオンハルト・オイラー』を中心に同時代の数学者たちによって関数の概念が発展した。変数 \(x\) の関数を表す記号として \(f(x)\) を考え出したのはオイラーである。オイラー自身、様々な関数を研究しいくつもの定理を生み出した。
現代において、関数の性質を研究する分野を『解析学』と言うが、これを『数学の王道』だという人もいる。まだまだ未解決の問題だらけであり現在でも盛んに研究されている。
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